本年度の公民教材開発論では,開発教育協会と神奈川県国際交流協会が制作・発行している「新・貿易ゲーム」を用いて,貿易ゲームを行いました。
ゲーム参加者は7つの国のどれかに所属して,それぞれ配布されたもの(はさみや定規,コンパスといった道具,A4用紙,通貨)を用いてマーケットで求められる規格の製品を作り,富を増やしていくことを目的として行動していきます。
今回は,道具と通貨は豊富にあるが,A4用紙が乏しい国(A1,A2),道具と通貨は普通にあるが,A4用紙が乏しい国(B),道具と通貨は乏しいがA4用紙が豊富にある国(C1,C2),道具と通貨とA4用紙すべて乏しい国(D)という計7国を設定して,学生に参加してもらいました。
一回目はシンプルに物作りだけでゲームを行い,二回目からは内政と銀行をいれ,三回目はさらに先進三カ国の会議を導入して,貿易ルールを決めるといったように,計三回ゲームを行いました。ちなみに二回目と三回目は連続して行っています。
貿易関係図をみると, 最初は国同士の交換や売買がメインであったのに対して,次第に国同士で共同作業を行うようになり,国際分業体制が構築されてきたことがわかります。この体制が結果として多くの国々に富をもたらすことになりました。
ただし,道具や資金を豊富にもつA1やA2が主導権を持つ形で分業体制が構築されてきたので,資源しかないC1やC2,何もないDなどの国から「先進国と連携して豊かになったけれども,ほぼ先進国の言いなりだった」といった声が後のディブリーフィングで出てきたように,分業体制は必ずしもフェアなものではなかったようです。二回目にA2と分業体制を構築したC2は三回目には独立してC1と連携していくようになりました。先進国と組むことで豊かにはなるが,自主的に内政や生産をしていくことはあきらめなければならないというトレードオフの関係が今回のゲームで見えてきました。
また,二回目からは銀行を導入したので,他国がこつこつ製品を作っている一方で,先進国は預金利息で収入が増えていくので,次第に製品を作らなくなってました。
今回はじめて貿易ゲームを行いましたが,思った以上にリアルな世界経済が描けたという印象を持ちました。来年度も行う予定です。