12/17-18に北陸建設弘済会の共同研究プロジェクト(「中山間地の活性化策を用いた課題解決手法の調査研究」)の現地調査として高知県いの町へ行ってきました。目的は平成15年から活動を始めているNPO土佐の森・救援隊が発行している森林証券「モリ券」を調査することです。
モリ券は森林の整備作業に参加するボランティア活動(ボラバイトと呼んでいます)を通じてもらうことができ,それを地場産品と交換することができる「交換券」として位置づけているようです。これが「交換券」であるのはモリ券の価値が「ボランティア活動で流した汗の代償として,ボランティア自らが,ボランティアの心をもって,決めることができる」ということに由来しているようです。1モリ券で1000円以下のものと交換できますが,おつりはでないし,現金と併用して使うこともできません。例えば1400円の地場商品は1モリ券2枚で交換するしかないと言うことです(モリ券1枚と400円という使い方はできない)。
地場産品と交換できる店舗は22店あり,いの町だけではなく,高知市,須崎市,津野町,三原村,安芸市,香美市など広く取り扱い店舗があります。またキジ肉や土佐和牛,イノシシ肉,たたき,うなぎなども事務局を通してモリ券を使うことができます。また,別の種類のモリ券としてガソリンスタンドでも使えます。
モリ券でガソリン代を支払う土佐の森・救援隊理事の田植さん
ガソリンスタンドのレジを見せてもらいました。左側にクリップ止めで束になっているのがモリ券です。
ところで,なぜここでモリ券を発行しているのか。それは森林を守り育てる人自伐林家(自ら所有する森林で伐採を行う林業家)が減少し,問題点の多い大規模化する林業などによって不健全な森林が増加しているという強い危機感があるようです。モリ券は単に森林のボランティアを集める手段というだけではなく,地元の林業以外の人々にも地元の森に関心を持ってもらうということがその動機にあるとのことでした。
もちろん,誰もが簡単に林業のボランティアができるのかという疑問がわきますが,土佐の森・救援隊では作業を標準化することでセミプロではなくても作業することができる仕組みを作っています。われわれもそれを見学させてもらいました。
今回の視察は1日目にお話を伺い,2日目に山に入って作業を見学するというスケジュールだったのですが,羽田空港に移動中柏崎駅で1時間20分ポイント故障と言うことで停止して飛行機に間に合わず,現地に着いたのが夜の8時。山の中なので途中から真っ暗な中携帯も通じない状態でレンタカーを運転していきました。途中雪も降り出し,個人的には少々つらかったです。
これは2日目の朝。とても寒い。
ただし,その分得られたものは多く,先に地域通貨ありきではいかに地域通貨が持続しないかということを痛感しました。それぞれの土地で抱える問題を痛切に感じた地元の人々がみずからその問題解決に向かうとき,ツールとして地域通貨が役立つのだということが今回の視察を通じて改めて認識しました。モリ券それ自体の仕組みは非常にシンプルですが,「自伐林業的森業」広めていくツールとしては十分機能しており,徐々にではあるけれども仕組みは進化しつつあると思いました。
モリ券や土佐の森・救援隊の活動については以下を参照のこと。
土佐の森・救援隊のHP
事務局長 中嶋健造さんのHP 里山’s Bar
四万十通信